課税所得500万・800万・1,000万|年いくら節税できるか
それでは本題の試算です。小規模企業共済(年84万円)とiDeCo(年81.6万円)を両方フル活用し、合計165.6万円を所得控除した場合、年いくら税金が減るかを概算します。
節税額は「控除額 × その人の税率(所得税+住民税)」でざっくり計算できます。住民税は所得にかかわらず一律約10%。所得税は課税所得が高いほど税率が上がる「累進」です。
| 課税所得(目安) |
所得税率 |
+住民税 |
合計税率の目安 |
165.6万円控除での節税額(年・概算) |
| 500万円 |
20% |
10% |
約30% |
約49.7万円 |
| 800万円 |
23% |
10% |
約33% |
約54.6万円 |
| 1,000万円 |
33% |
10% |
約43% |
約71.2万円 |
※所得税率は2026年6月時点の累進税率の区分に基づく概算です。実際には控除によって課税所得の区分自体が動くケースや、復興特別所得税(所得税額の2.1%)などもあるため、あくまで目安として捉えてください。
ポイントは、課税所得が高い人ほど、同じ掛金でも節税額が大きくなることです。課税所得1,000万円クラスなら、フル活用で年70万円前後の税金が減る計算になります。
月額に直すと、課税所得500万円の人でひと月あたり約4万円、1,000万円の人でひと月あたり約6万円の節税。しかもそのお金は税金として消えるのではなく、自分の退職金・年金として積み上がっていくわけです。「払う」のではなく「自分の口座に移す」感覚に近い。ここが、個人事業主が小規模企業共済とiDeCoを最優先で検討すべき理由です。
無理にフル活用しなくていい
ただし注意点も。iDeCoは60歳まで引き出せず、小規模企業共済も基本は廃業・退職時の受け取りです。手元の現金が薄くなると、せどりの仕入れ資金や、急な出費に対応できなくなります。
節税額の大きさに目を奪われて、生活や事業が回らなくなっては本末転倒です。まず生活防衛資金と仕入れ資金を確保し、余力の範囲で掛金を決める。節税は「余ったお金の置き場所を最適化する」くらいの順番がちょうどいいと思います。

③ 民間の生命保険・医療保険(控除は限定的)
最後に、民間の生命保険・医療保険です。これらにも「生命保険料控除」がありますが、②に比べると節税効果はかなり限定的です。
生命保険料控除は、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3区分があり、それぞれ所得税で最大4万円、合計でも最大12万円までしか所得控除になりません。
小規模企業共済(84万円)やiDeCo(81.6万円)が全額控除なのと比べると、桁が違います。つまり、「節税のために」生命保険にたくさん入る意味はほとんどないということです。
民間の保険は、あくまで「万一のときに家族を守る」という保障目的で、必要な分だけ入るのが基本。節税は小規模企業共済とiDeCoでやり、保障は保障で割り切る。この切り分けが大事です。
私自身も、生命保険は「死亡保障」と「がん保障」だけに絞り込んで、貯蓄性のあるタイプや過剰な特約は外しました。保険の見直しについては、関連記事も参考にしてみてください。
経費にできるもの・できないもの
個人事業主がよく混乱するのが、「この保険、経費にできるの?」という問題です。最後にここを整理します。
経費にできるもの(事業の支出)
- 事業用の損害保険:店舗・事務所・在庫(商品)にかける火災保険・損害保険料
- 賠償責任保険など、事業活動にひもづく保険
これらは「事業のための支出」なので、必要経費として売上から差し引けます。
経費にできないもの(所得控除になるもの)
- 国民健康保険・国民年金 → 経費ではなく社会保険料控除
- 小規模企業共済・iDeCo → 経費ではなく小規模企業共済等掛金控除
- 民間の生命保険・医療保険 → 経費ではなく生命保険料控除
ここを間違える人が本当に多いのですが、国保も共済もiDeCoも生命保険も「経費」ではありません。これらは事業の経費(青色申告決算書)ではなく、確定申告書の「所得控除」の欄で差し引くものです。
「経費」も「所得控除」も、最終的に税金を減らす効果は同じ方向ですが、書く場所が違う。ここを取り違えると申告ミスにつながります。判断に迷ったら、税理士に確認するのが確実です。私も税務の判断は自分で抱え込まず、税理士に任せています。

まとめ:守りながら、いちばん効率よく節税する
個人事業主の保険・共済を、もう一度整理します。
- 国民健康保険・国民年金:必須。支払いは全額が社会保険料控除
- 小規模企業共済(月最大7万円):退職金を自分でつくりながら全額所得控除
- iDeCo(月最大6.8万円):年金を上乗せしつつ全額所得控除、運用益も非課税
- この2つは別枠で、フル活用すれば年165.6万円の所得控除
- 課税所得が高い人ほど効果大。1,000万円クラスなら年70万円前後の節税も
- 民間の生命保険は控除が限定的。節税は共済・iDeCo、保障は保障で割り切る
- 国保も共済もiDeCoも生命保険も「経費」ではなく「所得控除」
個人事業主は、会社が守ってくれない代わりに、自分で「守り」と「節税」を同時に設計できる自由があります。小規模企業共済とiDeCoは、その自由をいちばん効率よく使える制度です。
ただし、流動性には要注意。生活防衛資金と仕入れ資金を先に確保したうえで、余力で掛金を決める。この順番さえ守れば、個人事業主の保険・共済は、将来の安心と今年の節税を両取りできる、心強い味方になります。